もう カゴ落ち に関する安易な幻想を抱くのはやめましょう。元記事ではカゴ落ちを防ぐ対策をいくつかピックアップしていますが、ある程度の効果はあっても、カゴ落ち自体を防止するのは、多くのサイトでは不可能に近いでしょう。あるべきハズの売上げを逃しているワケですから事案としては深刻ですが、状況を理解すると、その売上自体が幻想でしかないのです。もっと深刻なのは「カゴ落ちするほと客が来ない」状況であり、カゴにも入らないほど興味が抱かれない方が問題です。
「なんでうちのECサイトはこんなにカゴ落ちするんだろう…何か対策を打たないと…」
と思っている方。カゴ落ちとはカゴに入ったまま商品が購入されないことを意味し、ECサイト全体の約70%にものぼります。裏を返すと、カゴ落ちは改善することで売上アップが望める、大きな可能性を秘めているのです。とはいえ、カゴ落ちをどのように解決すればいいのかはわかりにくいですよね。

カートに入れる意味が違う
ショッピングカートに商品を入れるのは、購入意図と意志があっての行動であり、本来は、そのまま購入されるのが当たり前と思うものですが、ECの普及と一般化によって、その位置付けは明らかに変わっています。
そのギャップによって、EC運営側には「カート落ち」が深刻な問題と捉えられがちですが、肝心の利用者からすれば、「それはちょっと気になった商品」程度のもので、購入行動上にあるとはいえ、購入意志が高いとは別モノです。
様々なサイトを徘徊するユーザーにとって、たまたま訪れたサイトで見つけた「マーキングアイテム」程度に「カートイン」するのが実態で、カゴ落ち額の多さは問題ではありません。確認すべきは「カゴにも入らない・見向きもされない商品」であり、金額よりもその中身が重要なのです。
利用者の行動はサイトからの促しで、多少のリターンや購入に結びつく為、カゴ落ち施策は必要ではありますが、そもそもカートのシステムの方が問題です。
モバイル普及で加速する カゴ落ち
カートシステムの多くがそのデータをブラウザに依存しています。決済ASPサービスでも「カート情報の保持」は、比較的短時間がデフォルトであり、大方1週間内には、カート情報は消去されます。
出先でモバイルで閲覧しカートインし、自宅のPCで購入手続きをする「デバイスまたぎ」の購買行動は、モバイルトラフィックが主流を占めるサイトでさえ20%前後は存在するといわれており、モバイル完結型の購買行動が浸透しているとはいえ、完全解決にはまだまだ時間がかかります。
またこの際、カートインした情報はブラウザに依存している為、モバイルブラウザとPCブラウザが異なります。自宅のPCで決済しようにもカートには入れたハズの商品は存在していません。仕方なくカートに入れ直して購入してくれればイイのですが、大抵は「もういいや」と離脱するでしょう。どちらにしてもモバイルで入れたカート情報は、消去されるまで保持され、めでたく「カート落ち」するワケです。
カゴ落ち 対策よりも決済選択枝の充実を
現時点において、ECサイトや運営側が顧客の決済カード情報を保持することは禁止されている為、ショッピングカートと決済手続きは分離している状態のハズです。
サイトが稼働しているサーバー上で入力カード情報が通過する、API式もモジュール式もNGの為、多くは決済代行社から提供された領域への誘導となる、トークン式かリンク式が採用されています。
つまりカートに入れていざ購入手続きの際に、クレジットカード情報などを入力するのは「別サイト」に飛ぶワケで、その手間でもモバイルオンリーでの購入促進は、アマゾンログインペイメントのような「すでに会員登録も決済登録も済ませた」状態が前提になるワケです。
大手ショッピングモールのほとんどがカート情報の保持を「会員ID」に紐付けています。もちろん在庫の兼ね合いもありますから、延々にカート保持をすることは稀ですが、固定商品販売の場合、カート情報はログイン以降引き継ぐことが重要になります。
つまり今運用しているシステム自体がカート落ちを生んでいるのであり、その対策にプッシュ配信して購入促進しようが、本質的な問題は解決には至らないのです。
会員IDへの紐付けが可能な決済ASPカートは、ecBeingなどの大手向けでは存在しますが、そもそものシステム利用料はそれほどお安くはありません。
カゴ落ちを気にするより、選んだシステムの「穴」を補完する施策を検討する方が健全ですね。モバイルでの購入完結を促進するのは、アマゾンや楽天などのログインペイメントの導入など、決済手段と選択肢を整えること。
コスト負担が少ないのは、「お気に入り」活用の促進ですが、これまたユーザー利用度が低いのが難点であり、ユーザーページの充実度を図らなければなりません。
カート落ちで積み上がった金額に幻想を抱くより、カートにされ入らない商品を根本的に見直す方が建設的なのです。
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